サンゴの研究が進み、受精させて殖やす「有性生殖」が可能に。それにともないサンシャイン水族館は、2014年12月から「サンゴ礁再生プロジェクト」をスタートしました。
でも、「無性生殖」に比べて別の親の卵と精子が受精しなくちゃいけないから難しいんですよね?
そうじゃな。じゃが、産まれるサンゴのDNAが違うから、さまざまな環境に適応していくことができるというメリットもあるのじゃよ。
大きな環境の変化にも対応できるように、サンゴに多様性をもたせなくちゃいけないんですね。
以前までは有性生殖による増殖は知見も少なく困難をきわめておりましたが、サンゴの研究が進み、近年では有性生殖による増殖も行われるようになりました。「サンゴ礁再生プロジェクト」では、サンゴの卵と精子が受精する有性生殖の方法を使ってサンゴを殖やし、サンゴ礁の再生を目指します。
サンゴの産卵
プラヌラ幼生
赤ちゃんサンゴ
育てたサンゴが産卵します。卵の一部は、水族館で育てます。
子サンゴが育ちます。
やがて育ったサンゴが産卵し、豊かなサンゴ礁の再生を目指します。
「サンゴ礁再生プロジェクト」ではサンゴの卵と精子を得るために、まずは親となるサンゴを育成するところからスタートします。そしてその親サンゴが産卵し、自然界でのサンゴの加入量を増やすとともに、得られる一部の卵を回収、サンシャイン水族館へと輸送し、サンゴの赤ちゃんを大切に育てます。成長した子サンゴは恩納村の海へ移植し、サンシャイン水族館の定期的な管理のもとで成長を見守ります。
子サンゴたちが成長し産卵を繰り返すことで、失われつつある豊かなサンゴ礁の再生がなされることを祈りたいのう。
「サンゴ礁再生プロジェクト」で使われているサンゴの種類は、サンゴ礁の優占種でもあるミドリイシサンゴの仲間です。現在は3種類のミドリイシサンゴを選定しています。
クシハダミドリイシ
アクロポーラ・ドネイ
ウスエダミドリイシ
いろいろなかたちのサンゴがいるんだね!
沖縄のミドリイシサンゴの仲間は、毎年6月ごろに一斉に産卵していますが、産卵するときには卵と精子が詰まったバンドルというカプセルを放出します。1つのバンドル内の卵と精子は同じ親群体由来【=同じ遺伝子型(DNA)】のため受精できませんが、水中では別の親群体由来【=異なる遺伝子型(DNA)】の卵と精子と出会うことができれば、受精ができるようになります。もちろん受精ができるのは同じ種類のサンゴとだけです。
広大な海で出会う…なんてロマンチック♥
産卵時には卵と精子が詰まったバンドルを放出します。
バンドルが割れると中の卵と精子が水中へ飛び出します。
別の親由来の卵と精子に出会い受精することができます。
「サンゴ礁再生プロジェクト」は、有性生殖を利用するため、親サンゴの選定はとても大切です。しかし種類は同じなので、見た目の違いはありません。では、いったいどのようにして見分けるのかというと・・・サンゴ自身がもっている遺伝子型(DNA)を解析し、個体識別をしていきます。
研究員の座安佑奈さん、新里宙也さん
これまでの人為的なサンゴ増殖活動には、同じ親群体由来のサンゴばかりが増えて遺伝的多様性が低下するなどの、影響があるのではないかと心配されている面もありました。しかしその多様性を測るための方法や、具体的な目標もこれまではありませんでした。
沖縄科学技術大学院大学 (OIST) マリンゲノミックスユニットでは2014年にミドリイシサンゴの色々な種類の遺伝的多様性を調べるための技術開発に成功し、南西諸島全域のサンゴ礁の現在の状態を調べています。
サンシャイン水族館では、以前より協力関係にあった沖縄県恩納村役場より沖縄科学技術大学院大学(OIST)マリンゲノミックスユニットを紹介していただき、共同研究契約を締結いたしました。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)マリンゲノミックスユニットの識別技術で遺伝子型が違うと判定された親群体を育成し、その卵と精子を集めて受精させることによって自然な状態に近いサンゴ礁再生のための努力をしています。
なるべく多様な繁殖をさせるには、OISTさんとの協力が欠かせないんじゃ! これからも仲良くさせてもらいたいもんじゃ。
「サンゴ礁再生プロジェクト」では、2014年12月から親サンゴの育成を開始、2017年6月に産卵を確認できました。そして2018年には卵から育成したサンゴの移植を行い、現在も成長がみられています! サンシャイン水族館では今後も「サンゴ礁再生プロジェクト」を続けていきます。
ひび建て式によるサンゴの育成
2014年開始直後
2019年
2019年6月 恩納村海域にて サンゴの産卵の様子
サンゴの卵はこんなにも小さいのじゃ。ここから新しい命が産まれるなんてまさに生命の神秘じゃね。
サンゴ礁再生プロジェクトで産卵された卵の一部は水族館に持ち帰り、育成します。1年ほど水族館で育成されたあとに、恩納村の海へ返還されます。こちらでは、サンゴたちの成長の様子をご紹介します!
3日後
プラヌラ幼生浮遊中
5~7日後
プラヌラ着底
数日後
サンゴへ
3か月
6か月
12か月(1才)
18か月
24か月(2才)
「サンゴ礁再生プロジェクト」では、サンシャイン水族館が「有性生殖」にチャレンジしているのじゃ。