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サメって人を襲うの?イメージでは語れない豊かな生態と神秘の繁殖

波間に身を潜め、油断したところをガブリ――過去に、そんな映画が流行した影響か、「サメは人を襲う生き物」と思っている人は多いようです。ところが、これは大きな誤解。実際のサメは、比較的おとなしい性質で、ほかの捕食者の餌食になることも。
あまり知られていないサメの生態や、サンシャイン水族館での見所をご紹介します。

多様に進化した、不思議なサメの繁殖方法

サメは、マグロなどが属する硬骨魚類に対して、軟骨魚類に属する魚の仲間です。軟骨魚類は、文字どおり、全身の骨のほとんどが軟骨でできた魚のこと。世界に生息するサメは全部で400種類ほど、そのうち日本近海に130種類、沖縄近海に91種類がいるとされています。

サメの生態の大きな特徴は、その繁殖方法です。同じサメの仲間でも「繁殖様式のデパート」と呼ばれるほど繁殖のパターンがいくつもあり、神秘に満ちています。
現在わかっているサメの繁殖方法には、大きく分けると「卵生」と「胎生」の2つがあります。

卵を産む「卵生」

卵生は、卵を産み出す繁殖方法で、海底付近に棲む底生性のサメによく見られるものです。
硬い殻に包まれた卵を海中に産み、産み出された卵殻内で子ザメが育ちます。その後、サメの種類によって異なりますが、孵化するまでは数ヵ月から数年。子ザメは卵の中にいるあいだ、卵黄から栄養をとって成長します。
ちなみに卵の形はさまざまで、ドリル状になっている卵、半透明の財布型で「人魚の財布」と呼ばれる卵もあります。
卵生のサメには、ネコザメ、トラザメ、トラフザメ、ナヌカザメなどがいます。

赤ちゃんを産む「胎生」

胎生は、体の中である程度育った赤ちゃんの子ザメが産み出される繁殖方法です。
サメの繁殖に大きな特徴があるといわれる理由には、この胎生がさらに4つの型に分けられることにあります。複雑な胎生の型別の繁殖方法を見てみましょう。

  • 卵黄依存型

    卵黄依存型は、体内で卵が育ちます。卵の中にいる子ザメは、体内で卵黄から栄養を得て成長し、孵化した後に産み出されます。子ザメが成長過程で母体由来の栄養を摂取せず、卵黄の栄養に依存して育つため、卵黄依存型と呼ばれます。
    卵黄依存型のサメには、ジンベエザメ、アブラツノザメなどがいます。

  • 卵食・共食い型

    卵食・共食い型は、同じ子宮内にエサとして産んだ卵や兄弟を、子ザメが食べて成長する繁殖方法です。卵食型の子ザメのおなかは、食べた卵黄がたくさん詰まって大きく膨らんでいます。
    卵食・共食い型のサメには、アオザメ、ホホジロザメ(ホオジロザメ)、シロワニなどがいます。

  • 胎盤類似物型(組織栄養型)

    胎盤類似物型(組織栄養型)は、子宮内に満たされた分泌物を子ザメが摂取して成長する繁殖方法です。サメと同じ底生性のアカエイ類も同じ型の繁殖方法で知られていて、アカエイ類の場合は「子宮ミルク」と呼ばれる栄養分で赤ちゃんが成長します。
    近年の研究で、サメにも母体から栄養をとるものがいることが判明し、胎盤類似物型が加わりました。卵黄依存型の派生の繁殖方法で、分泌物にはいくつかの物質があると考えられていますが、詳しくはわかっていません。胎盤類似物型は、ドチザメ科に多く見られるそうです。

  • 胎盤型

    胎盤型は、人間と同じように、子ザメとへその緒を通じて栄養をやりとりする繁殖方法です。
    胎盤型のサメには、オオメジロザメ、アカシュモクザメなどがいます。

サメは人を襲う凶暴な生き物?

果たしてサメは、映画のように人を襲う凶暴な生き物なのでしょうか?

サメは世界中の海に生息していますが、人がサメを襲撃する発生率は世界的に見て少なく、その確率は「数百万分の1」とする研究報告もあります。また、研究対象の55年のあいだ、例えばアメリカでサメによる襲撃が報告されたのは1,215人でしたが、多くはすり傷程度の軽傷で、人が亡くなった例は全体の2%です。映画に出てくるような、巨大で獰猛なサメに襲われる報告もほとんどありません。
ただ近年、土地開発が進んだアメリカの東海岸やオーストラリア南部といった人口密集地では、たくさんの住民や観光客が海岸や海中を訪れるようになり、サメと遭遇して事故に遭う確率が高まったようです。

人を攻撃するとイメージされてしまっているサメは、ホホジロザメ(ホオジロザメ)、イタチザメ、オオメジロザメ。日本では、ホホジロザメ(ホオジロザメ)は北海道から沖縄までの海域、イタチザメとオオメジロザメは暖かい沖縄の海に分布しています。
人がサメに襲われる事故は、たまたま大型のサメと遭遇し、サメが人をエサと勘違いして起こります。漁師、ダイバー、サーファーなど、海を訪れる人がサメに襲われる事故に遭遇していますが、亡くなった人はほとんどいません。
多くのサメは、好んで人を襲撃することはなく、中にはジンベエザメのように穏やかな性質で、ダイバーといっしょにゆったり優雅に泳いでくれるサメもいます。

サンシャイン水族館で見られるサメたち

サンシャイン水族館では、さまざまなサメたちに会うことができます。水槽の中をゆったりと、迫力ある泳ぎを見せてくれるサメを観察していると、性質や顔つきなど、個性豊かな特徴が発見できるはずです!
※状況により、展示生物が予告なしに変更になる場合がございます。

トラフザメ

トラフザメの名前の由来は、幼魚の頃の体色に、淡い黄色にトラのような黒い縞模様が入っていること。頭が大きくやや縦長で、短めの胴体に長い尻尾と尾鰭(おびれ)が特徴です。インド洋沿岸と東インド諸島近海に多く分布していて、南日本でも漁獲されます。繁殖の仕方は卵生。体の側面と背面には、黄灰色の地色に黒色の斑点が散らばっています。

トラフザメを正面から見ると、なんとなく笑っているような表情で愛嬌があります。
館内1階大水槽「サンシャインラグーン」で見ることができます。

エポーレットシャーク

エポーレットシャークは、テンジクザメ目テンジクザメ科に属するサメの仲間。オーストラリアやニューギニア島のサンゴ礁に生息し、主に浅瀬で見られます。
海底でじっとしていることが多いのですが、なんと胸鰭(むなびれ)と腹鰭(はらびれ)を使って海底を移動することができます。サンシャイン水族館でも、エサの時間になると水面近くの岩場によじ登り、飼育スタッフにエサをおねだりします。
館内2階「オーストラリアの海~グレートバリアリーフ~」水槽で見ることができます。

ほかにもたくさん!いろいろなサメの種類

現在、サンシャイン水族館では見ることができないサメですが、水族館で飼育されることがある、そのほかのサメをご紹介します。

シロワニ

シロワニは、体長2~3mもある巨体で、「獰猛なサメ」のイメージの強面な外見。その風貌から人食いザメのようにいわれることが多いシロワニですが、飼育下の環境にもよくなじみ、従順でとてもおとなしく優しい性質です。東太平洋を除き、日本をはじめ世界中の温帯・熱帯海域に分布しています。
攻撃されるなど何らかの理由で興奮したときを除いて、自分から好んで人に危害を加えることはありません。

イヌザメ

イヌザメは、体長15~17cmほどで孵化し、最大で約1mまで成長します。泳ぎが得意ではないので、昼間は岩やサンゴ礁の陰でじっとしています。胸鰭(むなびれ)を使って這うように泳ぐ姿が、犬が地面を嗅ぎ回る様子に似ていることから、イヌザメと名づけられました。

トラザメ

トラザメは、日本や東シナ海に分布するサメ。体の模様が虎柄に見えることからトラザメと名づけられました。全長50cm程度と小型で、おとなしい性質をしています。細長い体で海底を泳ぐ底生性で、繁殖方法は卵生。卵からは、全長7cmほどの愛らしい子ザメが生まれます。

ツマグロ

ツマグロは、体長1.6~2m、南日本、インド洋、太平洋の熱帯沿岸などに広く分布するサメです。水深30cm程度の浅い海に出没することがあり、甲殻類や軟体動物、魚を食べます。尾鰭(おびれ)、背鰭(せびれ)、尻鰭(しりびれ)の先端が黒色なのが特徴です。

名前に「サメ」がつくけど、サメじゃないサメ

「◯◯サメ」という名前なのに、実はサメじゃない!ちょっとややこしい「サメ」をご紹介します。

ゾウギンザメ

ゾウギンザメは、ギンザメ目ゾウギンザメ科に属する深海魚(深海生物)。軟骨魚類に分類されますが、トラフザメなどのサメが分類される「板鰓亜綱(ばんさいあこう)」ではなく「全頭亜綱(ぜんとうあこう)」に分類されるため、正式にはサメの仲間ではありません。
日本での飼育展示数は少なく、サンシャイン水族館が初めて孵化に成功しました。ゾウギンザメについては深海魚のページでもご紹介しています。

深海魚(深海生物)を水中ドローンで撮影!深海の不思議な世界へ潜入

コバンザメ

コバンザメは、スズキ目コバンザメ科に属する全長1mほどの魚。頭部にある吸盤で大型の魚やウミガメの体にくっついて生活しています。
特徴的な小判の形をした吸盤から「コバン」、サメのイメージそのままのシャープな見た目から「サメ」と名づけられたものの、タイやアジのような普通の魚と同じ硬骨魚類に分類される魚で、サメではありません。

チョウザメ

チョウザメは、チョウザメ目チョウザメ科に属する魚。チョウザメの卵は高級食材「キャビア」として食用にされることで有名です。
体の大きさや顔つきもサメによく似ていて名前にも「サメ」がついていますが、これもまたサメではありません。コバンザメと同じく、硬骨魚類に分類されます。

飼育スタッフから一言

サメの仲間と聞くと「小魚を追い回している凶暴な魚」といったイメージがあるかもしれません。しかし実際には、そんなイメージだけでは捉えきれない、いろいろな種類のサメがいます。

特に、サンシャイン水族館で飼育しているトラフザメは、主に夜行性で、軟体動物や小型の甲殻類を食べていると考えられています。日中は、ゆったりと泳いでいる温厚なサメで、サンシャイン水族館ではダイバーが抱えて泳ぐ姿を見ることができます。
温厚な性質ながら、その大きさや流線型の体つきは、トラフザメがサメの仲間であることを思い出させます。

サメの魅力は、こうした迫力や格好良さ。今までのイメージがくつがえるような、サメの世界にふれていただけたらと思います。